「お金の話は苦手」でも大丈夫:親子で始める安心のお金の会話
お金について子供と話すことに対して、どのように始めたら良いのか、あるいは難しさを感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。特に、ご自身が経済的な不安を抱えていらっしゃったり、お金に関する知識に自信が持てなかったりする場合、子供にどのように伝えれば良いのか、将来にわたる心配をかけてしまわないかと、話すこと自体に抵抗を感じてしまうこともあるかと存じます。
しかし、子供が将来、自立してお金と向き合っていくためには、家庭での小さな会話から始めることが非常に大切です。お金の話は、決して難しい専門的な知識を教え込むことから始まるわけではありません。お子様の成長段階に合わせて、日々の生活の中での自然なやり取りを通じて、お金に対する健全な感覚や価値観を育んでいくことができます。
この記事では、「お金の話は苦手」と感じている方でも、お子様と安心してポジティブにお金について話せるようになるための心構えと、具体的なステップについてご紹介いたします。
なぜ「お金の話は苦手」だと感じてしまうのでしょうか
お金の話に苦手意識を持つことは、決して珍しいことではありません。その背景には、様々な理由が考えられます。
- ご自身がお金で苦労した経験があり、子供にも同じような経験をさせたくないという強い思いから、かえって話すことをためらってしまう。
- お金に関する知識に自信がなく、子供に聞かれた時にうまく答えられないのではないか、間違ったことを教えてしまうのではないかという不安。
- お金の話をすると、子供に心配をかけてしまうのではないか、あるいは守るべきプライバシーに関わることだという感覚。
- 家庭内でのお金の話がタブー視されてきた環境で育ち、どのように話せば良いのか分からない。
これらの感情は、お子様の将来を真剣に考えていらっしゃるからこそ生まれるものだと存じます。まずは、ご自身がそう感じていることを認め、責めないことが第一歩です。お金の話は、ネガティブなことではなく、お子様の未来を応援するための大切なコミュニケーションの一つである、と捉え方を変えてみましょう。
「安心のお金の会話」のための心構え
お子様と安心してお金について話すために、いくつかの心構えを持っておくと良いでしょう。
- 完璧を目指さないこと 全てを知っている必要はありませんし、全ての質問にすぐに答えられる必要もありません。お子様と一緒に学び、考える姿勢が大切です。
- 親自身が「知らないことは恥ずかしくない」と思うこと お金に関する知識は常に新しくなりますし、すべてを網羅することは不可能です。分からないことは、正直に「お母さんも/お父さんも、それはよく知らないな。一緒に調べてみようか?」と伝えましょう。
- 子供を不安にさせない伝え方を意識すること 家庭の経済状況について、子供に過度な心配をかける必要はありません。話すのは、お金の概念や使い方、価値観など、お子様自身の学びや成長に関わる部分に焦点を当てましょう。
- 一方的に教えるのではなく、対話を大切にすること お子様の考えや感じ方を聞き、それに対して応答する形で会話を進めましょう。お子様自身が考え、気づく機会を与えることが重要です。
具体的な会話のステップとヒント
では、具体的にどのように会話を始めていけば良いのでしょうか。いくつかステップとヒントをご紹介します。
- ステップ1:まずは親自身が、自分のお金に対する考えや感情を少し見つめてみる お子様と話す前に、ご自身がお金に対してどのようなイメージを持っているか、どのような時に不安を感じるかなどを静かに振り返ってみましょう。これは、ご自身の感情を理解し、お子様との会話の際に感情的にならないようにするための一助となります。
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ステップ2:日常の小さなことからお金の話を始める 特別な時間を作る必要はありません。例えば、
- スーパーでの買い物時、「この野菜はいくらだね」「今日の晩ごはんは〇〇円くらいかな」と値段に触れる。
- 公共料金の明細を見た時に、「電気や水道を使うのにもお金がかかるんだよ。大切に使おうね」と資源の大切さと結びつけて話す。
- 欲しいものをお子様が見つけた時、「それを買うには、お父さん/お母さんがどれくらい働く必要があるかな」「今持っているお小遣いで買えるかな」と一緒に考える。
このように、生活の中にある「お金」を話題にする練習から始めてみましょう。 * ステップ3:子供の質問や興味を尊重する お子様がお金について質問してきたら、それは学ぶ絶好の機会です。どんな質問でも真剣に聞き、お子様の理解力に合わせて丁寧に答えましょう。もし分からないことがあれば、「一緒に調べてみよう」と前向きな姿勢を見せることが大切です。 * ステップ4:将来のことと、それにかかるお金の話を、目標達成のための手段としてポジティブに話す お子様の将来の夢や、やりたいことについて話す機会を持ちましょう。そして、「その夢を叶えるためには、どのような準備が必要かな?」「お金は、その夢を実現するための力になってくれるんだよ」というように、お金を目標達成のためのポジティブな要素として結びつけて話します。不安を煽るような表現は避け、「どうしたら実現できるか」という解決策に焦点を当てましょう。 * ステップ5:失敗談も共有する 親御さんご自身が過去にお金で失敗した経験があれば、それを率直に話すことも有効です。ただし、自己否定的にではなく、「こういう失敗をしたから、今はお金を使う時にこう気をつけるようになったんだよ」というように、そこから学んだ教訓を伝える形で話しましょう。お金との付き合い方は一生続く学びであることを伝えられます。
お金をかけずにできる実践例
お金に関する学びは、必ずしも特別な教材や習い事が必要なわけではありません。日々の生活の中で、お金をかけずに取り組めることはたくさんあります。
- 家庭での役割と報酬(お手伝いなど) お子様にお手伝いをしてもらい、その対価としてお小遣いを渡すことは、働くことと報酬の関係を学ぶ機会になります。ただし、全ての家事にお金を払うのではなく、家族の一員としての役割(片付けなど)と、特別な報酬が発生するお手伝いを区別するなど、家庭のルールを明確にすることが望ましいです。これは、お金のためだけでなく、家族のために貢献することの価値も同時に伝える良い機会となります。
- 「おうち銀行」や「おうちショップ」ごっこ 小さなお子様であれば、遊びを通してお金の数え方や交換を学ぶことができます。紙や厚紙で手作りのお金やお店屋さんを作り、おもちゃなどを商品に見立てて売り買いするごっこ遊びは、お金のやり取りの基本的な仕組みを楽しく理解するのに役立ちます。
- 絵本や図鑑、公共図書館の活用 お金や経済に関するテーマを扱った絵本や児童書は数多くあります。図書館を利用すれば、費用をかけずに様々なお金に関する本に触れることができます。親子で一緒に読みながら、話の登場人物がお金とどう関わっているかなどを話し合うのも良い方法です。
- 無料で提供されているオンライン教材や動画 最近では、子供向けの無料の金融教育コンテンツがオンラインで提供されています。こうしたものを活用するのも一つの手です。ただし、情報の正確性や、お子様の年齢に合った内容であるかは、保護者の方が事前に確認することが重要です。
結びに
お金の話をすることに不安や抵抗を感じるのは、自然な感情です。しかし、その不安と向き合い、お子様との対話を通じて少しずつお金について話していくことは、お子様が将来経済的に自立し、お金に振り回されることなく、自分らしい人生を歩んでいくための大切な土台となります。
完璧を目指す必要はありません。日々の小さな積み重ねが、お子様にとってかけがえのない学びとなります。お子様の成長を信じ、不安を少しずつ手放しながら、「安心のお金の会話」を始めてみてはいかがでしょうか。お子様との会話を通じて、親御さんご自身もお金との向き合い方について新たな気づきを得られるかもしれません。