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親子で始めるお金の話:難しく考えず、まずはここから

Tags: 金銭教育, 親子コミュニケーション, 家庭教育, 経済的自立, お金の話

お金について子供と話すことは、将来子供が経済的に自立し、自分の力で未来を切り拓いていくために、非常に大切な機会となります。しかし、お金の話は難しいと感じたり、どのように始めたら良いか分からなかったりして、つい後回しにしてしまうこともあるかもしれません。

特に、日々の生活の中で経済的な不安を感じている場合、お金について考えること自体に抵抗があったり、子供に心配をかけたくないという思いから、お金に関する話題を避けてしまうこともあるかと思います。しかし、完璧を目指す必要はありません。まずは、難しく考えすぎず、できることから少しずつ始めてみることが大切です。この機会に、お子様との新しいコミュニケーションの一つとして、お金の話を取り入れてみてはいかがでしょうか。

なぜ子供とお金の話をすることが大切なのでしょうか

子供が将来、お金で困ることなく、豊かな人生を送るためには、お金との健全な向き合い方を身につけることが不可欠です。お金は、生きていく上で必要なものを手に入れたり、自分の夢や目標を叶えたりするための「道具」です。この道具の使い方を知ることは、子供が社会に出て自立する上で、大きな力となります。

お金について話すことは、単に計算ができるようになることだけではありません。お金を通じて、物の価値、働くことの意味、計画を立てることの重要性、そして社会の仕組みなど、生きていく上で大切な多くのことを学ぶ機会となります。子供が小さいうちから身近なこととしてお金について考える習慣をつけることは、将来の選択肢を広げ、自信を持って社会へ踏み出すための基盤となるのです。

親がお金の話を始めるために大切な心構え

お金の話を始める前に、親御さん自身がいくつか心に留めておくと良い点があります。

まず、完璧な知識を持っている必要はありません。子供と一緒に学び、考えていくという姿勢が何よりも大切です。お金に関する話題に苦手意識がある場合も、その正直な気持ちを認めつつ、「一緒に考えてみようか」という前向きな姿勢で臨むことが、お子様にも伝わります。

次に、ご家庭の経済状況について、子供の年齢や理解力に合わせて、隠しすぎず、かといって過度に不安を煽るような形でもなく、適切に伝えることを意識します。「うちはお金がないから、あれもこれも買えない」といった抽象的で否定的な言葉ではなく、「今月は大切な支払いがいくつかあったから、今はお菓子は一つだけにしようね」のように、具体的な理由や状況を、冷静に、かつ優しく伝えるように心がけます。

そして、お金の話は一度すれば終わりではなく、子供の成長に合わせて繰り返し、違った角度から話すことが重要です。お子様が興味を持ったことや、日常生活で起こった出来事などをきっかけに、自然な流れで話題にできると良いでしょう。

日常生活でできる!お金の話を始める具体的なステップ

お金の話を特別な時間として設けなくても、日々の暮らしの中に、お金について学ぶ機会はたくさんあります。お金をかけずに、すぐに始められる具体的なステップをご紹介します。

ステップ1:身近な買い物から「価値」と「選択」を学ぶ

お子様と一緒にスーパーやお店に行った際に、並んでいる商品の値段や、どれくらいの量が入っているかなどを観察することから始められます。例えば、「このお菓子は100円だけど、こっちの大きいのパックは300円で3つ分入っているね。どっちがお得かな?」のように問いかけ、値段と量、そして欲しいものを手に入れるためにお金が必要であることを認識させます。

また、限られた予算の中で何を選ぶかという「選択」の機会を与えることも有効です。例えば、「今日は300円までお菓子を買っていいよ。どれにしようか一緒に考えてみようか」と伝え、その範囲内で子供自身に選ばせることで、予算内でやりくりする感覚や、自分の選択に責任を持つことを学ばせることができます。

ステップ2:家の中の「お金の流れ」を意識する

電気、ガス、水道などの光熱費や、食費など、家計を支えるために日々お金が使われていることを、子供に分かりやすい言葉で伝えます。例えば、「部屋の電気をつけっぱなしにしていると、その分だけ電気代がたくさんかかるんだよ」「蛇口から水を出しっぱなしにすると、水道代が増えるね」のように、自分たちの行動がお金と繋がっていることを具体的に話します。

これにより、物の価値や、限りある資源を大切に使うことの重要性を学ぶことにつながります。水道や電気の使用量を意識する、食べ残しを減らすなど、日々の生活の中でできる「節約」は、お金を大切に使う具体的な実践となります。

ステップ3:お小遣いを活用して「計画」と「管理」を学ぶ

お小遣いは、子供がお金を自分で管理し、使う計画を立てる練習をするための素晴らしいツールです。いくら渡すか、どのようなルールにするかなど、家庭の状況に合わせて親子で話し合って決めます。

お小遣い帳をつける習慣をつけることも良いでしょう。何に使ったかを記録することで、自分のお金の流れを把握する練習になります。欲しいものがある場合、すぐにお金を使わずに貯めるという経験は、目標達成のためにお金を「待つ」ことや「計画する」ことの大切さを教えます。お小遣いの範囲内でやりくりする中で、子供は自然と「収入」と「支出」のバランス感覚を身につけていきます。

ステップ4:「働くこと」とお金の関係を伝える

親御さんが働いて収入を得ている姿を見せることも、お金について学ぶ大切な機会です。「お父さん(お母さん)がお仕事に行くのは、家族が安心して暮らせるように、ごはんを食べたり、お洋服を買ったり、学校に行ったりするためのお金を稼ぐためだよ」のように、働くこととお金、そして自分たちの生活が繋がっていることを具体的に伝えます。

家事やお手伝いをすることに、直接的にお金を結びつけるか(お手伝いでお小遣いを渡すか)は家庭の方針によりますが、少なくとも、家族みんながそれぞれの役割を果たすことで、生活が成り立っていることを伝えることは重要です。働くことには責任が伴い、その対価としてお金が得られるという、社会の基本的な仕組みを理解する手助けとなります。

ステップ5:お金に関する疑問に一緒に向き合う

子供から「どうしてこれはこんなに高いの?」「お金がなくなったらどうなるの?」といった疑問が出たときこそ、お金について深く話し合うチャンスです。分からないことは「分からない」と正直に伝え、一緒に調べたり、考えたりする姿勢を見せます。

難しい質問に対して、すぐに正解を教えるのではなく、「〇〇ちゃんはどう思う?」「どうしたら良いか一緒に考えてみようか」のように、子供自身に考えさせることを促します。この対話を通じて、子供はお金に関する様々な側面に触れ、自分なりの考えを深めていきます。

まとめ:未来へつながる、小さく確実な一歩を

子供とお金の話を始めることは、決して難しいことではありません。高価な教材を使ったり、専門的な知識を身につけたりする必要はありません。日々の生活の中で、身近な出来事をきっかけに、親子で一緒に考え、対話することから始めることができます。

今日ご紹介したステップは、どれも家庭の中で、お金をかけずに実践できることばかりです。完璧を目指さず、まずはできることから一つでも取り組んでみていただければと思います。

お金の話をすることは、お子様が将来、お金に振り回されることなく、自分らしい人生を送るための土台を作る大切な時間です。そしてそれは、親御さん自身にとっても、お金との向き合い方を見つめ直し、お子様と一緒に成長していく素晴らしい機会となるはずです。

お金についてオープンに話し合う家庭環境は、お子様に安心感を与え、将来のお金に関する不安を軽減することにも繋がります。焦らず、お子様のペースに合わせて、温かい対話を重ねていってください。その一歩一歩が、お子様の、そしてご家族の明るい未来へと確実に繋がっていくことでしょう。