子供の「やってみたい」を応援するお金の話:夢や目標と家計をつなげる会話術
子供が成長するにつれて、「あれをやってみたい」「これが欲しい」といった希望や夢を口にする機会が増えてきます。親としては、できる限り子供の可能性を応援したいと思う一方で、経済的な状況から、すぐに「無理だ」「今は難しい」と答えてしまうことに心を痛めている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、お金の余裕がないからといって、子供の「やってみたい」という気持ちに蓋をする必要はありません。むしろ、この「やってみたい」という気持ちこそが、子供がお金との向き合い方を学び、将来の自立に向けた大切な一歩を踏み出すための貴重な機会になり得るのです。
お金がないから諦める、ではなく、「どうすれば実現できるか」をお金と関連付けて一緒に考えるプロセスは、子供の金銭感覚や計画性、そして困難を乗り越えるための工夫する力を育みます。ここでは、お金をかけずに、家庭での会話を通じて子供の「やってみたい」を応援し、夢や目標と家計をつなげる方法についてお伝えします。
なぜ「やってみたい」とお金をつなげる必要があるのか
子供にとって、お金はまだ抽象的な概念かもしれません。「欲しいものが買えるもの」「使ったらなくなるもの」といった程度の理解に留まっている場合が多いでしょう。
しかし、自分の「やってみたい」という具体的な願望と、それを実現するためにはお金がどのように関わるのかを学ぶことは、お金を単なる消費の道具としてではなく、夢や目標を達成するための「手段」として捉える第一歩となります。
また、家計の状況を踏まえながら「どうすればできるか」を一緒に考える過程で、子供は現実的な視点を持ち、限られた資源(お金、時間など)の中で優先順位をつけたり、代替案を考えたりする力を身につけます。これは、将来、自分自身の力で経済的に自立していく上で欠かせない能力です。
お金をかけずにできる:「やってみたい」を応援する会話のステップ
子供の「やってみたい」を、お金の学びの機会に変えるための、具体的な会話のステップをご紹介します。特別な教材やお金は必要ありません。日々の親子のコミュニケーションの中で実践できます。
ステップ1:まずは子供の「やってみたい」をじっくり聞く
子供が何か「やってみたい」と言ってきたら、すぐに否定せず、まずはその内容をじっくり聞いてあげましょう。どんなことに興味があるのか、なぜそれをやってみたいのか、具体的なイメージはあるのかなど、子供の言葉に耳を傾けます。この時、親が子供の興味関心に寄り添う姿勢を見せることが大切です。頭ごなしに否定せず、「そうなんだね、面白そうだね」と肯定的に受け止めることから始めます。
ステップ2:実現するために「どれくらい」必要か一緒に調べる
子供の「やってみたい」を実現するためには、何が必要で、それにはどれくらいの費用がかかるのかを一緒に調べてみましょう。例えば、特定の習い事をしたいなら月々の費用、旅行に行きたいなら交通費や宿泊費、特定のものを欲しがっているならその価格などです。
この「調べる」という行為自体が、お金との向き合い方を学ぶ上で非常に有効です。インターネットを使って情報検索をしたり、お店の広告を見たり、実際に店舗に足を運んでみたり。この過程で、子供は必要な情報にアクセスする方法や、価格が場所によって違う場合があることなどを自然と学ぶことができます。お金を直接使うわけではないので、経済的な負担もありません。
ステップ3:今の家計でそれが可能か正直に話す
調べた結果を踏まえ、それが今の家計の状況で実現可能かどうかを、子供に分かりやすく伝えます。家計簿を見せたり、具体的な金額を詳細に説明したりする必要はありません。
例えば、「これはすぐにできそうだよ」「これは少し頑張ればできそうだね」「残念ながら、今の家のお財布ではすぐに用意するのが難しいことなんだ」のように、大まかな状況を正直に伝えましょう。
大切なのは、「お金がないからできない」と突き放すのではなく、「今、お家のお金は〇〇(例えば、お家賃やご飯代、光熱費など、生活に欠かせないもの)のために使っているから、これはすぐに難しいんだよ」のように、お金が何に使われているのか、家計全体に流れがあることを伝えることです。これにより、子供はお金には限りがあること、そして生活を維持するために必要なお金があることを理解し始めます。
ステップ4:どうすれば実現できるか一緒に考える
すぐに実現が難しい場合でも、そこで話を終わりにせず、「どうすればできるようになるかな?」「一緒に考えてみようか」と、解決策を模索する姿勢を見せます。子供の「やってみたい」という気持ちを叶えるために、親子で協力して考える時間にしましょう。
考えられる選択肢としては、次のようなものがあります。
- 費用を抑える方法を探す: 代替案はないか(例えば、高価な楽器ではなくレンタルから始める、公式のスポーツ教室ではなく地域のクラブを探すなど)、中古品で済ませられないか、手作りできないかなどを検討します。
- いつ、どれくらいの期間で実現を目指すか: 具体的な目標期日を設定し、そこから逆算して計画を立てます。「〇〇までに△円貯めるには、1週間でいくら必要かな?」のように、具体的な数字と期間を結びつけて考えます。
- 実現のためにどんなお金や工夫が必要か:
- お小遣いを貯める。
- お手伝いをして「お手伝い代」を貯める(家庭でのルール作りが必要です)。
- 無駄遣いを減らす工夫をする。
- 目標達成のために、家族で協力できることはないか話し合う。
- お金以外の手段(例えば、図書館で本を借りる、無料で参加できるイベントを探すなど)で「やってみたい」に近い体験ができないか調べる。
- 優先順位をつける: いくつか「やってみたい」ことがある場合、どれを優先するか、なぜそれを優先するのかを考えます。
このプロセスを通じて、子供は目標設定、計画立案、問題解決、そして優先順位付けといった、生きていく上で非常に重要なスキルを育んでいきます。
ステップ5:小さなことから「できた」を体験する
大きな目標だけでなく、無理のない範囲で設定した小さな目標を達成し、「できた」という成功体験を積ませることが大切です。例えば、「来月のお小遣いを全て貯めたら買える、500円のお菓子を買う」など、身近な目標から始めましょう。目標を達成できた時には、その努力をしっかりと認め、褒めてあげてください。成功体験の積み重ねが、さらに難しい目標にも挑戦する自信につながります。
会話を続ける上での大切なポイント
この一連の会話を続ける上で、いくつか心がけておきたいポイントがあります。
- お金の話をネガティブなものにしない: 「お金がないからダメ」という一方的な否定ではなく、「どうすればできるかな?」という前向きな問いかけを大切にしましょう。お金が希望を叶えるための手段であることを、子供が感じられるように導きます。
- 親も完璧でなくて良い: すべての問いにすぐに完璧な答えを出す必要はありません。「お母さんも一緒に調べてみるね」「どうしたらいいか、一緒に考えてみようね」という姿勢で十分です。親子の共同作業として取り組むことが、子供にお金の話への抵抗感をなくさせます。
- すぐに結果が出なくても焦らない: 金銭感覚や計画性は、一朝一夕に身につくものではありません。すぐに効果が出なくても焦らず、根気強く会話を続けてください。
- お金のことだけでなく、工夫や努力そのものも褒める: 目標達成のために子供が考えた工夫や、貯金のために我慢した努力など、プロセスそのものも大切に認め、褒めてあげましょう。
結論
子供の「やってみたい」という純粋な気持ちは、成長の大きな原動力です。経済的な不安から、その気持ちに「お金がないから無理」と答えてしまうことは、子供から学ぶ機会を奪ってしまうことにもつながりかねません。
「やってみたい」を、お金との向き合い方を一緒に考える絶好の機会と捉え、今回のステップを参考に、ぜひお子様との会話を始めてみてください。お金がないからと諦めるのではなく、どうすれば目標を達成できるのかを親子で一緒に考え、工夫する経験は、子供が現実を見据えつつ、自分の力で未来を切り開いていくための大切な力を育むでしょう。
お金との向き合い方を家庭で学ぶことは、子供が将来、経済的な困難に直面したとしても、冷静に状況を判断し、乗り越えるための方法を自分で考え出す力へとつながります。親子の信頼関係を築きながら、お子様の「やってみたい」を応援し、輝かしい未来への一歩を一緒に踏み出しましょう。