こども金融コンパス

豊かな心を育てるお金の話:経済的な余裕がなくてもできること

Tags: お金の教育, 価値観, 感謝, 工夫, 子育て

経済的な不安を抱える中で、お子様にお金について教えることに難しさを感じていらっしゃる方も少なくないかもしれません。将来、お子様がお金で苦労しないようにと願う気持ちは強くても、ご自身の状況から、十分な教育ができないのではないかと心配になることもあるでしょう。

しかし、お金との向き合い方を学ぶことは、単に貯金や投資の方法を知ることだけではありません。それは、物事の価値を理解し、限りある資源を大切にし、自分だけでなく周囲への感謝の気持ちを持つ、心のあり方を育むことでもあります。そして、この心の教育は、経済的な状況に関わらず、日々の生活の中で実践できることなのです。

ここでは、お金そのものに多くをかけられない状況でも、お子様の豊かな心を育み、将来の自立につながる「お金との向き合い方」を伝えるための方法について考えていきます。

日常生活の中に隠された「価値」を見つける

私たちが普段何気なく使っている物やサービスには、必ず何らかの「価値」があります。それは、それを生み出した人の労力であったり、使われている素材であったり、あるいは私たちに提供される便利さや喜びであったりします。お金はその価値を交換するための道具の一つにすぎません。

お子様と一緒に、身の回りの物がどのようにしてここにあるのか、考えてみましょう。例えば、食卓に並んだ野菜がどのように作られ、どれだけの人の手を経てきたのか。着ている服がどんな素材でできているのか、誰がデザインし、縫製しているのか。そうした話を通して、物の背景にある見えない価値に気づくことができます。

高価な物をたくさん買うことだけが豊かさではないことを、こうした日常の会話からお子様に伝えていくことが大切です。

「工夫」する楽しさを共有する

経済的な余裕がないと感じる時、私たちは自然と様々な工夫を凝らして生活しています。これは、限りある資源を最大限に活用するための知恵であり、生きていく上で非常に重要な能力です。

この「工夫」のプロセスを、ぜひお子様と共有してみてください。例えば、

こうした経験は、お金を使わなくても暮らしを豊かにする方法があることをお子様に示し、問題解決能力や創造性を育みます。工夫によって「できた」という達成感は、お金では買えない自信につながります。

「感謝」の気持ちを伝える習慣を持つ

お金を受け取ること、何かを提供してもらうこと、サービスを受けること。これらはお金が媒介することもあれば、そうでないこともあります。しかし、いずれの場合も、そこには相手の労力や善意が存在します。

日々の生活の中で、「ありがとう」という感謝の気持ちを言葉にして伝える習慣を持ちましょう。

こうした感謝の気持ちを表現することは、お金や物が当然のように手に入るわけではないこと、そして人とのつながりや社会の仕組みによって私たちは生かされていることをお子様に伝える機会となります。感謝の心は、お金との健全な関係を築く上での基礎となる「足るを知る」という考え方にも通じます。

お金だけではない「豊かさ」の形を示す

経済的な豊かさが得にくい状況にあるとしても、私たちにはお金以外の多くの大切な資源があります。それは、家族と過ごす時間、一緒に笑い合うこと、健康な体、学ぶ意欲、友達との友情、自然の美しさなど、お金では測れない価値を持つものです。

これらの非金銭的な豊かさに目を向け、その大切さをお子様に伝えましょう。

お金がないからできない、という考え方だけでなく、お金がなくてもできること、お金とは関係なく価値があることを積極的に示すことで、お子様はお金だけが幸せの基準ではないことを学びます。

まとめ

経済的な不安がある中でも、お子様にお金との向き合い方を教えることは可能です。それは、高価な教材を使ったり、難しい金融知識を教えたりすることだけではありません。日々の暮らしの中で「価値」に気づき、「工夫」を楽しみ、「感謝」の気持ちを大切にすること。これらはお金に頼らずともできる、お子様の心の豊かさを育み、将来の自立に必要な力を養うための大切な実践です。

お金との関係に悩む今だからこそ、お金だけではない真の豊かさについて、お子様と一緒に考え、話し合う機会を持ってみてはいかがでしょうか。それはきっと、お子様にとって、そして保護者の方自身にとっても、将来を生き抜くための揺るぎない財産となるでしょう。